労働党代表者会の開催の遅れが注目されている北朝鮮で、地方都市住民の間では、金正日総書記の後継体制が可視化すると見られる党代表者会に、さしたる関心を持っていないことが伝わってきた。14日に北朝鮮咸鏡北道茂山(ムサン)郡に住む取材協力者の女性が電話インタビューに答えた。
この女性は30代で夫が鉄鉱山の労働者。まず、最近の配給状況については次のように語った。

「9月9日の建国記念日に特別配給として、酒一本、洗濯石けん一個、歯ブラシと歯磨き粉一組みをもらった。食糧は、9月に入って10日分の配給として白米5キロが支給された。しかし、給料は4月分の3000ウォン(実勢レートで約155円)が、今になってようやく支給された」という。

茂山鉱山は中国に鉄鉱石を輸出しており、北朝鮮では稼働率の高い数少ない国営企業の一つ。いわば「優良企業」なのだが、労働者の待遇はとても良いとは言えない。給料だけでは生活できないので、労働者たちは職場の備品やガソリンをこっそり持ち出して売ったり、妻が商売に精を出したりすることで、なんとか家計を維持しているのだという。

6月末に撮影された中部の平安南道の公設市場。デノミ失敗の後遺症が残り、「人と物の流れは以前の50%程度」だと撮影者は言う。2010年6月 撮影:金東哲(キム・ドンチョル)(c)アジアプレス
6月末に撮影された中部の平安南道の公設市場。デノミ失敗の後遺症が残り、「人と物の流れは以前の50%程度」だと撮影者は言う。2010年6月 撮影:金東哲(キム・ドンチョル)(c)アジアプレス

 

9月上旬に予定されていた党代表者会がなかなか開催されない。金総書記の三男とされる金ジョンウン氏の権力継承と関連すると注目されているが、平壌(ピョンヤン)から離れた地方都市の一般住民はどう見ているのだろうか。

「党代表者会を開くということ、金ジョンウン同志が金総書記の後継者になるだろうということは、誰もが聞いて知っている。でも、私たちの生活にとって何も有益なことはないだろうから、代表者会を開こうが止めようがどっちでもいい。住民の関心は低い」
とこの女性は語った。

昨年11月に突然断行されたデノミ(通貨ウォンを100対1に切り下げ)措置は、深刻な通貨不信と物流の停滞を招いた。今も、北朝鮮国内では経済混乱が続いており、一般住民は厳しい生活を強いられている。党代表者会のことを考える余裕などないというのが、一般住民の感覚だと思われる。
アジアプレスでは北朝鮮北部地域の数か所に中国の携帯電話を送り、日常的に内部情報を伝えてもらっている。(中国延吉=パク・ヨンミン)

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