水害のせいではないはず
台風や水害も可能性としては低いと思われる。「党代表者会」参加者が続々と平壌に集結していると、9月に入ってからずっと報じられており、たとえ一部地域の参加者が来られなくても大勢に影響はないはずだ。参加予定者がそろうかどうかを気にするほど、北朝鮮は民主的な国家ではない。
水害の被害が大きく、金ジョンウン登場という「慶事」にとって、社会の雰囲気が良くないという説も出ているが、昨年11月のデノミ失敗以降、地方ではずっと餓死者が出ている有様なのに、今さら雰囲気もへったくれもないだろう。
「党代表者会なんてどうでもいい」というのが、窮して余裕のない民衆の声である。
(アジアプレス関連記事 「党代表者会に関心なし 一般住民語る」リンク)
開催遅延は金正日の健康悪化
開催遅延の原因は、金正日総書記の健康悪化の可能性が高い、というのが筆者の見立てである。
当初、今月6、7、8日と目されていた開催だが、その頃から金総書記の地方視察の報道が急に増え始めた。
筆者は、それらの報道が、健康がすぐれずに開催がずれ込んでいることへの「煙幕張り」が目的だったと思っている。健康に不安があるから、逆に国内外に一生懸命健在をアピールしたのだろう。
「極秘の中国訪問で無理をして体調を崩し、長丁場の会議にもたないほど悪いらしい」
このような情報が9月7日の段階で、筆者の耳に入ってきた。ソースは複数の国の情報機関である。
それでも筆者は、延期はないだろうと考えていた。フラフラの政権にとって、「党代表者会」は、体制延長に欠かせない今年のメインイベントである。
金総書記を短時間でも椅子に座らせて写真を撮り、開催の事実を公表するだろうと見ていた。
「党代表者会」自体は、何かを議論する場でもなんでもなく、金総書記と取り巻きで決めた人事を追認するセレモニーでしかない。
金総書記が大会場に入場して席に座り、拍手喝さいの中、最高指導機関選挙の結果発表が行われ、その名簿の中に金ジョンウンの名前がある。その場面がしっかり映像で内外に見せられればよいのである。
ところが、それができないでいる。
北朝鮮当局は、金総書記の状態が会議参加が可能な程度に回復するのを待ったが、とうとう9月半ばになってしまった、というのが事実に近いところではないか。
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