前回に続き、ある道の党機関の政治部門で働く労働党幹部、李さん(仮名、50代後半)のインタビューを掲載する。今回はデノミ措置について語った部分を整理した。聞き手は朴永民(パク・ヨンミン)。インタビューは8月後半に中国で行われた。
貨幣交換の目的は政治的な引き締め
問:昨年、「貨幣交換(デノミネーション、通貨単位ウォンを100分の1に切り下げた)」があり、国中が混乱したと聞きました。これをどう見ますか?
答:まず背景を知る必要があります。北朝鮮の人々は何もしてくれない国に代わって、血のにじむような努力をして(市場での商売行為を指す=編集者)、今や自力で生きていけるようになった、これが重要です。 前回に続き、ある道の党機関の政治部門で働く労働党幹部、李さん(仮名、50代後半)のインタビューを掲載する。今回はデノミ措置について語った部分を整理した。聞き手は朴永民(パク・ヨンミン)。インタビューは8月後半に中国で行われた。
貨幣交換の目的は政治的な引き締め
問:昨年、「貨幣交換(デノミネーション、通貨単位ウォンを100分の1に切り下げた)」があり、国中が混乱したと聞きました。これをどう見ますか?
答:まず背景を知る必要があります。北朝鮮の人々は何もしてくれない国に代わって、血のにじむような努力をして(市場での商売行為を指す=編集者)、今や自力で生きていけるようになった、これが重要です。国は「もうすぐ良い暮らしができるようになる」といいますが、現実はそうじゃないことはみんな知っている。国家の、つまり党の「配慮」が無くても、人々は生きていける。だから国があれこれ言っても従わなくなってきたのです。「何を言ってるの、私は現金を持っているのよ?」とね。これを国は、社会に「ひび」が入ったと見ているのです。
問:そうすると、経済的な措置というよりも、政治的な引き締めが目的だったと見るのですか?
答:私は二つの目的があったと見ています。一つ目は政治的な目的。これ以上、人民が国家から離れていく前に、もう一度、国の言うことを聞かせるようにしよう、そのためには国が経済を掌握して、人民の手に入る分を調節しなければならない、ということです。
もう一つが経済的な目的です。これからは金ジョンウンが後を受け継いでいく際に、お金はいくらあっても足りない、だから人民の懐からお金を強奪しよう、ということです。
そして誰も党を信じなくなった
問:貨幣交換の効果についてどう思いますか。社会はどう変わりましたか。
答:人々が党をこれっぽっちも信じなくなりました。北朝鮮で「党を信じる」ということがどういうことだか分かりますか?
問:金正日を信じるということ。
答:そうです。北朝鮮の人々はそれでも金正日を信じて耐えてきたのに、もうこれ以上党についていっても得るものは何もないということに完全に気づいたのです。人が生きるというときに、明日は今日より良くなければならないでしょう?今日はお粥だったら、明日は白米、という風に。そうならないばかりか、手元にあったわずかなお金まで巻き上げられてしまった。
だからもう「党は何の役にも立たない。これからは本当に自分の力だけで生きていくしかないんだ」と。「党」という言葉を頭の中から完全に取っ払い、信じられるのは自分だけ、という考えが一気に広まりました。
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