当初9月上旬の開催が予告されながら遅延していた労働党の代表者会が、28日に開かれると、北朝鮮メディアが21日に伝えた。
この代表者会に関連する動きと思われるが、北朝鮮当局が情報統制を強めていることがわかった。20日、北朝鮮咸鏡北道茂山(ムサン)郡に住む取材協力者の女性が電話インタビューに答えた。

この女性によると、先週開かれた人民班(行政の末端組織)の会議で
「中国の携帯電話を隠し持っている者は、すぐに自主的に申告して当局に機械を納めよ。そうすれば罪に問わないが、後に発覚した場合は厳罰に処す、と通達があった」
という。

茂山郡は中国と国境を接しており、中国の携帯電話の電波が届くため中国国内はもちろん、海外とも通話が可能だ。
北朝鮮の警察当局は5年ほど前から、国内事情の情報流出と、国外情報の流入の根源だと見て、中国の携帯電話の使用に神経を尖らせてきた。しかし、脱北した家族との連絡や密輸などに利用する者が後を絶たなかった。

党代表者会は、後継体制を確立するための重要なイベントであり、金正日総書記が参加する「一号行事」として準備が進められてきた。金総書記や要人らの身辺警護の問題がある上、内外に「党代表者会は、人民が望み、準備が円満に進んでいる」という演出をする必要がある。
7月以降、北朝鮮の警察当局は、平壌のみならず地方都市でも住民の移動を規制し、交通検問も強化、中国との国境都市では携帯電話の取締りが厳しくなっていた。

国境沿いの比較的大きな都市では携帯電話の取り締まりが特に厳しい。写真は鴨緑江上流の国境都市、恵山(ヘサン)市。両江道(リャンガンド)の道庁所在地だ。2010年7月 撮影 李鎮洙(C)アジアプレス
国境沿いの比較的大きな都市では携帯電話の取り締まりが特に厳しい。写真は鴨緑江上流の国境都市、恵山(ヘサン)市。両江道(リャンガンド)の道庁所在地だ。2010年7月 撮影 李鎮洙(C)アジアプレス

 

ところが、アジアプレスの他、韓国の「デイリーNK」「開かれた北朝鮮放送」などのメディアは、8月後半から、中国の携帯電話を使って党代表社会をめぐる北朝鮮国内の様子を取材・発信してきた。

労働新聞などの北朝鮮官製メディアが、党代表者会が近づいて国内は大いに盛り上がっていると報じてきたのに対し、実際には、北朝鮮の国民が、後継者問題に関心が薄かったり、規制強化にうんざりしていたりという「民衆の本音」を連日伝えていた。

党代表者会の延期の理由を北朝鮮当局は明らかにしていないが、金総書記の健康不安説や権力内の混乱説などが国際社会で報道されているため、携帯電話による情報流出に一層神経を使い始めたものと見られる。

アジアプレスでは北朝鮮北部地域の数か所に中国の携帯電話を送り、日常的に内部情報を伝えてもらっている。(中国延吉=パク・ヨンミン)

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