結局、北朝鮮当局は、9月28日に「労働党代表者会」を開くと公式に発表した。
これから一週間、世間の耳目は三番目の息子とされる金ジョンウンの名前と姿が現れるのかどうかに集中していくことになるだろう。
さてそれでは、金ジョンウンによる世襲後継はうまくいくだろうか?

金正日の時代と今は違う
"金正日は唯一の独裁統治者の地位を父・金日成から受け継いだ。だから息子のうちの誰かが<三代目>となるに違いない"
後継体制をめぐる、こんな分析はあまりに貧相だ。日本でも韓国でも、「ポスト金正日体制」の考察を、<息子金ジョンウン>による<世継ぎの物語>に矮小化しすぎである。

結論から言えば、金ジョンウンが「唯一の指導者」の座を継承することはもはや不可能、もしそのような動きを見せても結局失敗する、というのが私の見立てである。
金正日が世襲後継したときと今とでは、国際環境も、国内の状況もまったく異なるからだ。
金正日が金日成から権力を後継する作業を始めたのは70年代前半の冷戦期であった。

一党独裁で閉鎖的、非民主的な国家群が、資本主義国家群と正当性を競い合っていた国際環境だったからこそ、金日成は半世紀も独裁者であり続けられたし、社会主義陣営は親子世襲という無茶にも目をつぶり、政治的・経済的に援助を続けて世襲支配を支えてくれた。
北朝鮮が冷戦の最前線で資本主義陣営と対峙していたからだ。
しかし、今は違う。

北朝鮮と共通の利益を持ち運命を共にしようという陣営は消滅した。
それどころか、90年代後半には200-300万人もの餓死者を出し、北朝鮮の内からも外からも、体制の正当性はすっかり失われてしまった。
世襲権力を支える国際環境は存在しない。国民の支持も得られない。
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