■はじめに...■
2005年12月、ネパール、ルクム郡ルクムコット村で泊まった民家で、空いている部屋がなく、1つのベッドを分かち合ったことがある人民解放軍の女性連隊コミッサー"クランティ"は、その約1年後の2007年1月15日、暫定立法府の議員となり国会議事堂にいた。
議会の初日、他のマオイスト議員と同様にグレーのジャケットを着て議事堂に入ってくるクランティを見て、私は心の底からの感動を覚えたことを思い出す。
マオイストの本拠地で会ったクランティはいつも、ゲリラの制服である迷彩服を着ていた。長い髪を後ろで束ね大きな瞳をした彼女は"美人"の部類に入るといってもよく、強い個性を放っていた。
そのクランティを、まさか1年後に国会議事堂で見ようとは当時想像をすることもできなかった。
クランティだけではない。紛争中、取材に行ったロルパやルクムで、私はさまざまな個性的な女性ゲリラたちに会った。和平プロセスに入り、そのなかの何人かとは、カトマンズで、あるいはマオイスト軍の宿営地で容易に会えるようになった。
そうした元女性ゲリラたちから、かつての話を聞き取る作業を進めるうちに、彼女たちが実にユニークな体験をしていることを知った。当然のことながら、私はそうした彼女たちの体験を文章にしたいと思った。
これから始める連載は、私が興味を持った女性ゲリラたちのストーリーである。章によっては、私の取材記のような形で書きたいと思っている。最後までお付き合いいただきますよう、よろしくお願いいたします。
2010年10月 小倉清子
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