ロルパ郡の中央を南から北に向かってマディ川と呼ばれる川が流れる。谷間を縫って流れるマディ川のなかほどに、ロルパの郡庁所在地リバンがある。郡庁所在地といっても、端から端まで歩いて10分もかからない小さなバザールである。
マオイストが人民戦争を始めて数年たつと、国軍が駐屯するリバン以外のロルパの村は次第にマオイストの支配下に置かれていった。
2006年4月に和平プロセスに入るまで、リバンはロルパの51の村の中で、唯一政府機関が存在する"陸の孤島"のような村だった。
そのリバンから北西に2時間ほど歩くと、マディ川に沿って拓けた盆地に出る。
ジャンコット村のマディチョールと呼ばれるこの美しい村は、ロルパのなかでも最も豊穣な土地に恵まれている。三毛作を可能とする田畑で現金収入となる米や野菜を生産し、ロルパの他の村に比べると、裕福な農民も多い。
もっとも、ロルパの村人が"裕福である"とは、すなわち"自給自足が可能だ"ということを意味する。決して、生活が楽なわけではない。マディチョールでも、現金収入となる仕事を求めて、男たちがインドに出稼ぎにいく慣習はロルパのほかの村と同様である。
(つづく)
【連載】 ネパール マオイスト・女性ゲリラたちの肖像
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