石丸:教化所の外にあるんですか?
C:敷地の中ですが非常に遠かったですね。一課と五課の間の丘なんです。あちこちをやたらと掘って浅く埋めてしまうので、前に埋めた死体の脚が地面からのぞいていることがあるんですよ。
◎   ◎   ◎
キム:甑山には平壌(ピョンヤン)の人たちがたくさん捕まって来るんですが、彼らは生活力がなくてすぐに虚弱になってしまうんですよ。平壌の人がよく死にましたねえ。

石丸:死亡原因は主に何ですか?
キム:ほとんどが栄養失調です。まともに食べられないから。そこに熱病のパラチフスが流行って大勢死にましたね。パラチフスも普通なら治せるはずなんですが、栄養失調の人は下痢までしてしまうと三~五日ぐらいで死んでしまうんです。

石丸:一年の収容期間中、キム記者のいた班ではどれぐらいの人が死にましたか?
キム:そうだなあ、十数%というところかなあ。

石丸:死んだ人は誰が埋葬してあげるんですか?
キム:同じ囚人たちが埋葬しますよ。埋葬作業をすると、その日の食事は多めにくれます。

石丸:家族に引き渡さないんですか?
キム:刑期を全うする前に死んでしまうと、遺体を家族に引き渡すことが許されず、コッドンサンに埋めます。刑期が過ぎたら親戚や兄弟に掘って持って行けと連絡するそうですが、遺体を引き取りに来る人はいませんでしたね。

石丸:そうだと、埋められた遺体は相当な数になりますね。
キム:はい。同じ班の人間が埋葬させられるんですが、大雑把に少し掘るだけで、埋めた後に土もちゃんと固めないので、ちょっと掘ると他の遺体の骸骨が出てくるわけです。

ちゃんと墓だと分かるように大きく土を盛っていれば、その辺りを掘ったりしないじゃないですか。でもちょっとだけ土を盛る程度なので、時間が経つと平らになってしまうんです。だから、そこにお墓があることも知らずにまた掘るわけですね。そうするとまたそこから骸骨が出てくるわけ......。

石丸:いつどうして死んだかと名前を書いた墓標ぐらいは立てないんですか?
キム:そんなものは書きません。名前も書かない。
(つづく)
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