解説3 悪名高き甑山(ジュンサン)教化所 その正体を探る(中)
石丸次郎
[2]劣悪な環境と死者の発生
現在の北朝鮮では、一般社会でもまともに食べられなかったり、日常的に不潔な水を飲料に使用している人が大勢いる。また石鹸や殺虫剤が不足しているし、沐浴もままならないので、衛生状態は劣悪である。拘留施設の中がなおさらひどい状態にあるのは想像に難くない。甑山教化所の中では、十分な食糧が与えられないまま強度の高い労働が強いられ、収容者の多くが栄養失調状態だという。二人の証言を聞いてみよう。
C:甑山での暮らしが六ヶ月にもなれば、やつれ果てた容姿になってしまいます。とにかく情けないぐらい痩せてしまう。仕事がきついのにまともに食べられないからね。食べ物はトウモロコシ飯に豆を混ぜたものが出ます。石が混ざっていて歯を痛めるんですよ、それでもお腹が空くからとてもおいしいんです。畑から盗んだ生のトウモロコシや生のカボチャも食べるし、生の草、どじょう、カエルなど、目につくものは食べようとしますね。とにかくお腹が減るから。
石丸:カエルはどのようして食べますか?
C:畑仕事をしながら、警備の目を盗んで、その場で捕まえて生で食べます。見つかったら殴られたり罰を受けます。カエルは秋のには毒があるから、皮のあるままでは食べられません。春のカエルは、地下から出てきたばかりなので、寄生虫もおらず皮のまま生で食べられます。秋のカエルは、私も食べてみたけれど皮がとても苦いんです。皮を剥ぐのには力が必要で手では剥けないので、歯で噛んで一気にぺロリと剥きます。苦いのは毒があるからだそうです。女たちも食べますよ。皆よく食べていました。私は生で食べることだけはしないで、塩漬けにしていました。
◎ ◎ ◎
キム:カエル、ネズミ、全部捕まえて食べましたよ。お腹が空くと、牛や犬の大便に穀物の粒が混じっているのを洗って食べたり......。あまりにもお腹が空いたら便所に行くんです。あそこの便所というのがどれだけ汚いか。それでも、便所に白菜の干したやつの屑が散らばっていることがあるんです。捨てたもの。それをズボンで拭いて食べたりするんです。本当にどれだけお腹が空いたら、そんなものが食べられるのでしょうか。
石丸:キム記者も食べたことがありますか。
キム:私はそこまではしませんでした。でも、畑のトウモロコシやカボチャをそのままかじったことはありますよ。
拘留されている人々の死は、日常茶飯事のようである。「死因のほとんどは栄養失調で、遺体は『コッドンサン』(花の山)と呼ばれる丘に墓標もなく埋められるだけ」だという収容体験者たちの証言は、驚くほど似通っている。
石丸:一年半の間、あなたのいた班だけで何人が死にましたか?
C:六〇人いたうちの班だけで一二人が死にました。水が非常に悪くて、下痢をして死ぬことが多いんです。一週間下痢が止まらなかったら死んじゃいます。ぐったりしてしまって、助からないとなると、便所脇に置いておきます。
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