金正日は軍を掌握している
問:北朝鮮の社会はなぜ良くならないのか、と自問しておられるようですね
答:そうです。先ほども言いましたが(インタビュー2:限界に達した農村の暮らしの悲惨な現実 参照)、今の北朝鮮社会は、もうこれ以上ないくらいに混乱しており、「最後」と言ってもいいくらいなのです。でもなぜ、他の国だったら12回も(編注:朝鮮の慣用句で「何度も」という意味)人民が立ち上がるところを、北朝鮮ではそうならないのか、と思うのです。
問:外の世界の人も同じ疑問を抱いています。なぜ北朝鮮の人民は静かなのかと。
答:それは金正日が軍隊を掌握しているからです。世界の他のどんな例を見ても、軍隊が加わらない限り政変は起こり得ません。まずはこの点が大きいのです。金正日は自身の父(金日成)よりもひどい独裁を敷いています。例え誰であれ、少しでも自分に楯突く者があると処罰します。
そのようにずっとしてきたため、人民たちもそれを知っていて、自分の命だけは大事にしようと黙っているのです。中国や韓国では、何か罪があっても、何年か監獄に入ればいい、そこでご飯も食べさせてくれると思うのでしょうが、朝鮮ではそんなことはありません、殺してしまうんですよ、殺して。
それから、北朝鮮では宗教を抹殺してしまったのが大きいです。宗教を禁止し、自分だけを神のような存在に高めたではないですか。そのように人々を「思想」に縛り付けておいて、自由を完全に奪い取ってしまいました。りましたから、今では自分の頭で考えられない人間、ロボットになってしまったんです。
金正日はこう言います。「すべての人は例え病気であろうと、党がやれと言ったらやらなければならない」とね。だから私はこのような政治の体系には未来がない、体制が変わらなければだめでしょう。
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