金正日の「頼みの綱」、保衛部
問:国家安全保衛部というのがありますよね。彼らの役割はどのようなものですか?
答:金正日が体制を維持するために信頼を置いているのが保衛部です。これは私の知人の保衛部幹部から聞いた話ですが、去年と今年は、金正日は保衛部の忠誠心を高めようとたくさんのプレゼントを贈ったそうです。「1990年代の苦難の行軍のときは、お前たちはひどい有様だった」といいつつ、「今後に期待する」という含みを持たせた言い方をしたそうです。
問:1990年代に「ひどい有様だった」というのは、どういう意味ですか?大飢饉の際の社会混乱の時、保衛部は役に立たなかったのですか?
答:そうです。当時の社会混乱を鎮めたのは、保衛部ではなく、保衛司令部でした。(編注:保衛司令部とは元々、軍に関連する公安・政治問題を扱う部署。他の情報関連部署とは違い、金正日に直接、調査結果を報告するという。
90年代に軍によるクーデター計画や、国内機関が韓国と内通していることを暴いたといわれる。それらの事件の真偽は不明だ)保衛部は当時、まるで炭火のようで力がありませんでした。
それでも今は、金正日が自分たちを重用してくれる、信じてくれている、といって、内部の士気が大変高いそうです。
問:北朝鮮の国家システムは複雑です。党(朝鮮労働党)に保衛部、そして保安省(警察)、それぞれの力関係はどうなっているのでしょうか?
答:保衛部の人間は保安省に対し、その権勢を振るうことができるのですが、党に対しては手を出せない、といえば分かりやすいでしょうか。党が一番強いのですが、そうした力関係の中、今では保衛部に、党と並ぶような力を持たせようとしているということです。
問:それは社会の統制を強めようということでしょうか??
答:その通り。金正日といえども、今の北朝鮮は保衛部無しに体制を維持するのは難しいのです。今では党、国防委員会、保衛部、これらの機関の勢力が強いですね。(つづく)(整理:李鎮洙)