平壌の労働党の幹部から地方の農場員に至るまで、
「金正日時代は失敗の16年」
「進歩でなく後退の16年」
というのが、今や北朝鮮社会の一致した評価、コンセンサスになっているといっていい。

「無関心の一方で、若い正恩が後継者になったら、新しい感覚の政治を始めて改革開放に踏み切ってくれたらいいのにと、期待を口にする人もいます」
国内で取材活動を続ける金東哲(キム・ドンチョル)氏の言葉だ。
「北朝鮮の人たちは洗脳されたロボットのようなもの」

「生活が厳しくても、金正日体制は国民に支持されている」
このような固定イメージが日本ではいまだに強い。
一糸乱れぬマスゲームや軍事パレード、金総書記万歳を唱える人民、忠誠を誓うインタビューなど、マスメディアがこの10年繰り返し流してきた映像の影響が強いのだろう。

クーデターや暴動が起こったという情報を聞かないこともあろうが、閉ざされた国の中で、人々が自立した考えを持つことなど不可能だと、勝手に思い込んでしまっていないだろうか。
現実の北朝鮮の庶民はロボットなどではない。

限定されているけれど、政治や国際情勢の情報に耳をそばだて、家族の暮らしを守るために必死に働きながら、長く渇望してきた変化がいつ現れるのか、今か今かと待っている。
ポスト金正日時代に向かって北朝鮮が動き始めた今、民衆は変化を望んでいても、金正恩後継を支持しようなどとは考えていない。700人の北朝鮮人と会ってきた筆者の見立てである。

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