前回に続き、ある道の党機関の政治部門で働く労働党幹部、李さん(仮名、50代後半)のインタビューを掲載する。李さんは日ごろから農村をはじめ、道内を巡回しながら党中央からの政治的指導を北朝鮮の人々に「講演」するのが仕事だという。そのため、党の方針(上層部)にも人々の暮らし(現場)にも詳しい。インタビューは党代表者会前の8月に中国で行われた。

6回目の今回は、北朝鮮の変革についての李さんの見解を中心にまとめた。聞き手はアジアプレス北朝鮮取材班の朴永民(パク・ヨンミン)。

タヌキが100匹いてもトラ1匹に敵わない
問:今、農民たちさえも、コメのご飯を食べられないくらいに、北朝鮮の経済はひどい状況ですよね。そうした現実の中、農民たちは政府に対し、どのような期待、願望を抱いているのでしょうか?
答:農民だけでなく、農民たちをまとめる作業班長、そして農場全体を管理する管理委員長までもみな、口をそろえて「(経済)開放しなければならないのに」と言っています。私もよく、「こうした私たちの声を上部にしっかりと伝えてください」と頼まれます。私は上には報告しませんが。

問:なぜですか?すると、そのような経済開放を求める農民の声は、上部に伝わっていかないということですか?
答:意見がいくら上がっていっても、政策が変わらないから伝えないのですよ。1984年に総理を務めていた姜成山(カン・ソンサン)をご存知ですか。この人が以前「われわれも中国のように(改革開放を)しなければならない」と言ったことがありました。それに対し、金正日は自身の著作で「最近、一部で個人農業への改革が必要だと主張しているというが、我々は絶対そのような方向に行くことはない」と明らかにしました。そして姜成山は総理の職を追われました。

言い換えると、タヌキ100匹がいてもトラ1匹には勝てないということなのですよ。いくら下で悩んで騒いでもダメなんです。トラが考えを改めない限りは。それと保守勢力の存在があります。
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