朝鮮半島の統一について
問:統一についてはどう思いますか?
答:われわれの経済を考えても統一すべきだと思います。世界に200もの国がある中、なぜ朝鮮民族だけ統一できないのか、正直恥ずかしい思いです。ヨーロッパなどは今や大胆に国単位で連合しているというのに、北朝鮮はといえば...思うに北朝鮮は、李氏朝鮮時代の封建制を長く引きずっているようなものです。世界が文明化するときに一緒に波に乗れなかったばかりか、現代になっても遅れているではないですか。

今は1日の遅れが10年の遅れになる世の中なのに...このままでは北朝鮮は永遠に世界についていけなくなります。朝鮮戦争が終わったころはソ連のトラクターを分解しての構造を理解し、自分たちで作ったりもしましたが、今の科学技術の水準では無理です。せめて政治的な部分ではない、科学技術のな部分だけでも急いで門戸を開かなければ...

また、「統一はいつごろ成るか」という問いに対し、「北と南のあいだの差が天地ほど開いたときに可能になる」と答えた金日成主席の言葉が思い出されます。北が南より遥かに豊かになった時、ということなのでしょうが現状を見ると...。

「朝鮮には戻りたくない」という思い
問:中国に来てみてどうですか?
答:北朝鮮にいた時も中国について少しは知っているつもりでしたが、実際に来てみるとやはり違いますね。もっとたくさんのことを知りたくなります。私は好奇心も強い方ですから。漠然と道を歩くようなことはありません。何を見ても「私たちもあのように(豊かに)なれればいいのに」という思いです。

北朝鮮に戻る日も近づいていますが、正直に言うと、戻りたくありません。私が一人だったら、それこそどこかへ行ってしまいたい...もうすぐ私も60歳ですが、人生も残り少なくなってくる中、北朝鮮で人生を無駄に過ごしたと思うと、腹が立って仕方ありません。生まれてから苦労ばかりして...まったく涙が出てきます。

でも北朝鮮には私の家族がいますし、韓国に行って北朝鮮の実情を話すにも累が及ぶ人が多すぎますから...だからそれは私の道では無い、と思うのです。それでももう何年か我慢すれば変わるだろうと...また、そのような希望を持っているからこそ耐えられるのです。「その時」ために準備をしながら待ちます。

以上で労働党幹部である李さんへのインタビューの連載を終わる。アジアプレスが発行する北朝鮮内部情報誌「リムジンガン」1・2・3号に連載されている「北朝鮮経済官僚極秘インタビュー」も併せてご一読願いたい。

相変わらず人民の苦境が伝えられる北朝鮮ではあるが、中には李さんのような気骨ある人物もたくさんいる。アジアプレス北朝鮮取材班ではこれからも引き続き、北朝鮮の人々の暮らし、そして想いを伝えていく。(整理:李鎮洙)
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