20年ぶりの総選挙まで1週間を切った11月2日、ビルマ(ミャンマー)国内ではどんな動きがあるのだろうか。
正直言って、街の中の様子は先週とあまり変わらない。ちょっと大げさに言うと、数か月前ともほとんど変わりがない。目につく変化と言えば、停電が極端に減ったことだろうか。選挙前の、政府による人々への融和策かもしれない。もっとも雨季開けのこの時期は、水力発電がフル稼働するはずなので、停電が減ったことを選挙だけに結びつけるのは早計すぎる。
選挙に関連する変化と言えば、朝から夕方まで、インターネットへの接続が極めて難しくなってきたことだろうか。
選挙前に、外部に(政府にとって)不都合な情報の流出を防ぐことが目的だと、一般市民の間ではささやかれている。一番困っているのは、インターネットを使ってビジネスをしている地元のビルマ人だ。昨日(11月1日)の昼過ぎ、海外との教育関係の交流をしている事務所を訪れた際、接続不能となったコンピューターの画面がずっと晒されたままになっていた。
事務所の責任者は、
「朝からずっとこの調子だ。それも、10月末からずっとね。ほんとうに仕事にならないので、一刻も早く選挙が終わって欲しい」
とこぼしていた。
「じゃあ、あなたは選挙には行くのですね?」という問いかけには、
「行く訳ないだろう。行っても無駄だね。選挙によって今の状況が変わるわけでも、ましてや良くなるわけでもないし。それに、誰が当選するのか、もうわかりきっている」
と答えた。
彼は、選挙取材のためビルマに入国した私が、これまでインタビューをした人々の意見をまさに代弁している。選挙に対する人びとの態度からは、無関心というよりも悲観的という印象を強く受けた。
ビルマ軍政は今回の選挙について "fair and free(公正で自由)" だと主張し続けている。もしそれならば、人びとの生活を犠牲にしてまでもインターネットを遮断する必要はないはずだ。
しかも、皮肉なことに10月末には、政府が音頭を取ったコンピューターの展示会が、軍用のホールで催されていた。最終日の31日にその展示会に足を運んでみると、会場は人いきれでムンムンするほどの盛況であった。
インターネットを使って実現されるという夢のような社会と、現実の生活とのギャップに、とまどいさえ感じてしまった。(ラングーン=宇田有三)