二人の発言は、ともに拉致犯罪と朝鮮学校とをひと括りにするものだが、そもそも朝鮮学校に通う生徒の国籍事情もよくわかってない。
全国の朝鮮学校に通う生徒の51%が韓国籍で、朝鮮籍 46%。少数だが日本国籍者もいる。中井氏は朝鮮籍が北朝鮮国籍を意味するわけではないこともわかっていないようであった。

朝鮮籍とは、外国人登録上の「出身地表示」であって、北朝鮮国籍ではない。朝鮮籍だからといって金正日体制や総連組織を支持しているかどうかとはなんの関連もない。

大阪府民の筆者としては、特に橋下知事にはがっかりである。日本も加盟するこどもの権利条約、国際人権規約は「教育の機会均等、人種、民族、思想信条による差別の禁止」を明記している。

弁護士資格があるというが、条文を読んだことがないのではないか。橋下氏の発言は、お得意の思いつきのメディア受け狙いのパフォーマンスなのだろうが、ことは民族間の不信を増幅させかねない重要な事案だ。

まずは朝鮮学校のことを勉強してから発言してもらいたかった。
メディアにも問題多しだ。産経新聞は朝鮮学校除外のキャンペーンをずっと張っているが、その主張の根拠の一つは「朝鮮学校の無償化は国民感情に反する」である。

感情とは移ろうものだ。それを根拠に、厳密であるべき教育制度から朝鮮高校排除を主張するのは、ジャーナリズムの仕事ではないはずだ。
フジテレビにも質の低い報道があった。今年3月4日、国会議員らによる東京朝鮮高校視察のニュースの中で、校庭の隅にタバコの吸殻が落ちている画をわざわざ使っていた。

問題の本質とはまったく関係がない、あざとい手法だ。こんな編集をする記者と、記事出稿させたデスクはジャーナリストとして恥ずかしくないのだろうか。

一方で読者に知っておいて欲しいのは、朝鮮学校は運営・教育内容に様々な問題を抱えていることだ。そして、そこで悩みつつも、子供に民族教育を受けさせたいと考える在日コリアンの親たちがおり、8500人の子供が朝鮮学校に通っている現実があることである。
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