夕方6時、比較的大きな駅に到着すると、20分の停車のアナウンスに、乗客たちはぞろぞろと下車してゆく。皆、この駅の礼拝所で夕方のナマーズ・礼拝を行うのだ。
乗客たちがナマーズを行う間、先頭のディーゼル車輌の交換が行なわれる。私は駅の売店で、塩で炒ったひまわりの種を買い込み、列車に戻る。列車は30分後にまた動き出した。
日が暮れると、乗務員が夕食の注文を取りに来た。食堂車もあるにはあるが、それほど広くないため、ほとんどの乗客は乗務員に注文し、自分のコンパートメントで食べる。
この夜のメニューは、サフランで色づけした雛鳥の串焼きに白米の付いたチェロ・モルグと、鳥肉のトマトソース煮にごはんの付いたゼレシキポロ・ヴァ・モルグの二つだ。イランではどちらも一般的な外食メニューだが、四角い容器に収められた、いかにも駅弁らしい風情が嬉しい。
夜10時過ぎ、背もたれを持ち上げ中段ベッドをセットし、布団とシーツを敷いて横になる。列車の振動は心地よかったが、何度も目を覚ましてしまう。列車は頻繁に停車しているようだった。何もない暗闇で、対抗列車の通過待ちのために何分も停車することもあった。明日の到着時刻など気にしない悠長な旅人にとっては、それは望むところだ。汽車旅の長い夜を、心地よい浅い眠りを、こうしていつまでも楽しんでいられるのだから。(つづく)
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