あちこちで小さな軽食屋も店を開けていた。ひよこ豆をつぶして丸めたものを油で揚げたコロッケをバゲットにはさんで食べるフェラーフェルというサンドイッチは、テヘランでもよく見かけるが、本場はこの地方だ。

一つ500トマン、50円ほどとテヘランの3分の1の値段だ。別の油の大がまでは、三角形のサモサを揚げている。これもこちらが本場だ。中の具は主にジャガイモや野菜、ハムなどで、ケチャップをつけて頬張る。

別の一角では、ペルシャ湾で取れた新鮮な魚を売る屋台が並ぶ。名前も知らない大型の魚とともに、鯛、舌平目、大小のエビやカニが目を引く。せっかくなのでペルシャ湾の海の幸をと思ったが、バザールの周囲に魚料理を出す食堂は見当たらない。

魚屋の一人に聞いてみると、良い場所があるよと、レストランの名前と住所を書いてくれた。さっそくタクシーで向かってみると、そこは町外れの、結婚式場も備えた広い複合施設の一角にある新しいレストランだった。絨毯の敷かれた3畳間ほどの個室でゆったりと食事が取れる。衣をつけて油で揚げた白身魚とエビのプレートを出してくれた。

夕食を終え、市街中心部へ戻る頃には夜の9時を回っていた。テヘランの大バザールならとっくに店を閉めている時間だが、ここでは、過ごしやすいこの時間帯に買い物を楽しむ家族連れでまだまだ賑わっている。私たちは長い汽車旅の疲れを翌日に持ち越さぬよう、早々と宿に戻り、休むことにした。(つづく)

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