忍び寄る軍政の影(上)
※お断り ミャンマー(ビルマ)入国取材の安全を期して、宇田有三氏は「大場玲次」のペーネームを使用していましたが、民主化の進展に伴い危険がなくなりましたので、APN内の記事の署名を「宇田有三」に統一します。
タフンダン村から南へ2つめに位置するタストゥー村でのことも忘れられない。
この村には、尾崎さんとアンセーさんがカカボラジに初登頂を果たしたときにポーターとして働いた人が多くいる。ある男性は、ポーター1人が担ぐ(約21kg)4人分を、1人で担いで山を登ったそうだ。なにしろ、山地では貴重な「現金」を稼ぎたかったそうだ。
囲炉裏端に集まった20人ほどの村人に聞いてみた。
「この中で、これまでプータオに入ったことのある人はいますか?」
男性の手が3つほど上がった。そのほかの人は、黙ったまま。女性も8人ほどいたのだが、誰も手を挙げない。おそらく、彼ら大多数の村人は、一生この地域から出て行くことはないだろう。
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