新婚生活をゆっくりと楽しむ暇もなく、ウシャとタラはミテリ・キャンペーンに参加するために8月31日にルクムに向けて出発した。一月間におよぶキャンペーンが終わってまもなく、ロルパ郡の北東部にあるガム村である事件が起こった。
大半の住民がマガール族であるガム村では、毎年、ネパール暦のアソジ月の満月の日に祭りが開かれる。広場に村人が集まり、歌ったり踊ったり、店が出たりするこの祭りで、マオイストと反マオイストのグループのあいだで殴り合いの喧嘩が始まったのである。
2年前の同じ祭りの日に、ガム村では当時の統一人民戦線ネパール(後のマオイスト)の村長が、ネパール会議派や国民民主党の支持者に襲われて負傷する事件があった。2年後、このときの復讐のために、マオイストは他村からも活動家を送り込み、反対政党の支持者を襲ったのである。
この事件がきっかけとなり、ロルパ郡で統一人民戦線ネパール(当時はまだ"マオイスト"と呼ばれていなかった)の活動が活発になっていることを懸念して、政府は11月5日、警察官を動員して同郡北部でマオイストの活動をコントロールするための"オペレーション・ロメオ(ロメオ作戦)"を開始した。
その直前に、ロルパの西にあるパチャバン村で、マオイストの党首プラチャンダ自身が出席して政治トレーニングが開かれていたのだが、政府側はもちろん、ロルパで人民戦争を始める準備が進んでいることを知る由もなかった。
(つづく)
【連載】 ネパール マオイスト・女性ゲリラたちの肖像
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