民放に北朝鮮専門記者はゼロ
今夏の金正恩の登場、そして11月の砲撃事件と、北朝鮮関連の大きな出来事が続いた。
テレビ局は毎日のように北朝鮮関連ニュースを放映している。しかし、取材体制の内実はというと、お粗末なものである。驚くなかれ、TBS、テレ朝、フジ、日テレのどの局も、朝鮮語のできる半島専任記者を置いていないのだ(NHKにはいる)。

どの局にも、語学力もある優秀な人材はいるのだが、よくて他の分野と掛け持ち、多くの場合、経済部や政治部、情報番組などに配属されて北朝鮮とまったく関係ないネタを日々扱っている。

ソウル特派員は普通は期間が3年だ。だが、帰国後も朝鮮半島専任で仕事をしている人は皆無だろう。前出のY氏は、他の分野のネタを扱いながらも地道に長く半島取材を続け、独自の人脈を作ってきた。テレビ報道では珍しい存在だ。

もちろん、民放にもガッツがあって朝鮮半島問題にしっかり向き合おうとしている優秀な記者・ディレクターがいる。筆者は、彼/彼女たちから多くを学び、助けられてきた。

残念なのは、そのような人たちの能力と意思が、必ずしも民放の中で活かされていない点だ。
新聞はさすがにどの社も、言葉ができて朝鮮問題に造詣の深い記者を何人も抱えているのだが、経済危機の影響などで広告収入、部数が減って経営環境が急速に悪化、一部の新聞社では人員整理、取材費カットの嵐が吹き荒れている。いくつかの有力新聞は、紙面を見ると明らかに取材力を落としているのを感じる。

学者コメンテーターのトンチンカン
テレビや雑誌のコメンテーターにはトンチンカンで無責任な解説・コメントを撒き散らす人が少なくない。他の分野の問題ならばもっと慎重に発言しそうなものなのに、北朝鮮問題となると、情報収集も勉強もしているとは思えない、いいかげんなコメントを発する人がいる。

北朝鮮内部の情報が検証が困難であることをいいことに、一知半解で「言ったもの勝ち」で話しているとしか思えない。

専門外の人の場合は、「口が滑った」で済まされるかもしれないが、専門家の中からも、「明らかな見当違い」「トンデモ論」が出ることがある。
その典型が重村智計早大教授だろう。彼の「金正日死亡説、ダミー説」をご記憶の方も多いだろう。

2008年、金総書記が倒れた直後に出た週刊現代の9/27号で重村教授は、金総書記が5年前に死んでいることを前提に、重要行事を欠席したことについて「ダミーまでが倒れたので、代役がいなくなったからでしょう」と主張。
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