延坪島攻撃は、北朝鮮政権弱体化と混乱の表れだ
東京に向かう新幹線の中で原稿を書いていると、携帯に北朝鮮から電話がかかって来た!内部の取材パートナーの金東哲(キム・ドンチョル)からである。
彼の住む平安北道は、昨晩強い雨が降ったそうな。今(午前8時過ぎ)はよく晴れているとのこと。砲撃事件の影響は?と聞くと、「緊張?別に。普段どおりですよ」という。
さて、ドンチョルからの報告は別の機会に述べることにして、北朝鮮による大延坪(デヨンピョン)島砲撃について、今回は考えてみたいと思う。
砲撃の翌24日の晩、北朝鮮北部に住む別の取材協力者から電話があった。砲撃事件については既に知っていた彼女曰く「さっさと、戦争が起こったらいいのに」。物騒であるが、今の北朝鮮の民衆の気分をよく表している言葉である。
韓国が憎いのではない。戦争によってでも、早く今の政治が変わって欲しいという切実な表現なのだ。筆者には、北朝鮮が砲撃という無頼行為に出た理由を、示唆する言葉のように聞こえた。
砲撃の目的は何か
膠着状態の対韓、対米関係を有利に転換させること、金正恩の権威を高めること、危機を醸成して軍内部の結束を強めることなど・・・このような解説が専門家から出ている。
筆者も、一つ一つを否定するつもりはないのだが、ではなぜ、他の方法を採らないのか、砲撃でなければならないのかが、これだけでは解けない。
結論から言うと、武力挑発という極めてリスキーな手法に頼らざるを得ないほど、政権の弱体化と混乱が著しいからだ、というのが筆者の見解である。
弱体化の例は枚挙に暇がないが、列挙してみよう。
(1)孤立
国際社会との約束を履行せず、返すべき債務も放置したまま、麻薬や武器輸出を続ける北朝鮮の国際信用度はゼロだと言っていい。
冷戦時代のように運命を共にする「陣営」もないし、80年代のように非同盟諸国とからの支持を集めて、韓国に対抗するような外交力はすっかり失せてしまっている。
中国が米国に対する対抗上、そして隣国という地政学上の理由から支援しているが、中国は発展した韓国とも良好な関係を維持しており、中国は「いつでも、どこでも北朝鮮支持」というわけではない。
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