忍び寄る軍政の影(中)

※お断り ミャンマー(ビルマ)入国取材の安全を期して、宇田有三氏は「大場玲次」のペーネームを使用していましたが、民主化の進展に伴い危険がなくなりましたので、APN内の記事の署名を「宇田有三」に統一します。

プータオから歩いて1週間ほどの村。男の子たちが荷物を運搬する手漕ぎ船を操る。
プータオから歩いて1週間ほどの村。男の子たちが荷物を運搬する手漕ぎ船を操る。

 

ウー・テェットンが、私にだけ分かるように、愚痴にもとれる口調でこぼす。
「分かるかい? 彼らは贈り物を待ってるんだ。でもね、1つの村で、贈り物をしたことが隣の村に伝わると、それこそすぐに周りのほとんどの村に伝わるんだ。そうすると、後が大変。部外者は常に贈り物を持ってくるという習慣を、お互い持たない方がいいんだ」

そういうと彼は、自分の荷物の中から、小分けにした薬のカプセルの袋をいくつか取り出した。
「誰か身体の調子が悪い人はいますか。あまり多くは持っていませんが、具合の悪い人だけに薬をあげましょう。栄養剤と痛み止めです。すいませんが、全員の分はありませんよ」

彼はそういうと、村長さんに栄養剤のカプセルを手渡し、さらにその隣に座っている頭痛が治らないという女性に薬の包みを差し出す。
「じゃあ、今夜はこれで。これからお客さんは寝ますから」

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