大村一朗 テヘランの風~経済大改革に挑むイラン 静観する市民(2) 2011/02/03
燃料や光熱費の大幅な値上げに不安を訴える国民は多い。
多くの人は2、3ヶ月分のガソリンを既に買いだめしている。テヘランの大学に通う女子学生(23)は、「それ以降はまともに自家用車も使えなくなるのでは」と不安を隠さない。
音響機器を販売するフィルズィさん(45)は、「ガソリンに加え、光熱費まで一気に値上げされるのはつらい。個人には現金支給があるが、法人は対象外だ。どこも商品を値上げせざるを得ないだろう」と急激な物価上昇を懸念する。
この法の施行にあたり、イラン政府は国民の負担軽減と不満解消を目的に、補助金カットによって得られる増収の半分を、現金支給という形で各家庭の専用口座に振り込んでいる。
だが、この現金支給はイラン人だけが対象で、イラン社会を底辺で支える200万人以上のアフガン人移民は対象外だ。建設業を営むサーベリさん(47)は、その影響を次のように語る。「労働市場の賃金も急騰している。建築現場のアフガン人の日当は、以前の13万リアル(1000円)から18万リアル(1400円)に上がった。彼らは現金支給もなく、日当を上げてやらなければ生活できない」。
一方で、この現金支給のための登録を、およそ1400万人のイラン人が行なわなかったと言われている。政府は、国の財政を憂う多くの国民が現金支給を辞退してくれたと、感謝の言葉を述べている。
しかし現実は、この登録には年収、家族構成、持ち家や自家用車の数まで全て記入しなければならないことから、中産階級以上の市民の多くが今後の税制改革による増税を恐れ、登録を行なわなかったとされている。
さらに、支給金振込みのための口座を開設することが出来ない、あるいは支給金の話やこの法律の存在すら知らない辺境地に住む人々や遊牧民などが、この1400万人のかなりの割合を占めるのではとの指摘もある。