【デモ当日は携帯電話、SMSともに完全に遮断され、BBCペルシャ語放送も妨害電波によって視聴できなくなった(撮影・筆者)】
テヘランつぶやき日記大村一朗のテヘランつぶやき日記 アラブ諸国の政変、イランに飛び火か(1) 2011/02/15
2月14日、会社の同僚から、テヘラン中心部の広場に大勢の市民が集まっていると聞いたのは、午後4時前のことだった。耳を疑った。改革派のリーダーたちがこの日にデモを呼びかけていたことは知っていた。

彼らはチュニジアやエジプトの市民との団結を叫ぶ平和的なデモを行なうため内務省に許可を求めていたが、正直、この期に及んで内務省に許可を求める彼らのスタンスや、明らかに便乗デモと受け取られるその口実に、市民が呼応するとは考えられなかった。

エジプト・カイロのタハリール広場を埋めた数十万の群衆の映像をテレビで眺めながら、なぜエジプトの革命は成功し、イランの抗議デモは実を結ぶことなく立ち消えてしまったのかを、僕はこの数日、ずっと考えていた。抗議者の数だけでは負けていなかった。両者の違いは恐らく、デモに参加した一人一人の目的がどこまで明確に一致していたかだ。

エジプト市民は、是が非でもムバラク大統領を権力の座から引きずりおろす。そのためには手段を選ばないと誰もが考えていただろう。一方でイランのデモは、選挙のやり直しを求めることから始まり、一部は体制打倒に先鋭化したが、デモを主導する改革派の指導者たちは、最後まで体制の枠内での平和的な抗議運動という姿勢から抜け出すことはなかった。

ところが昨日、当然のことながら内務省の許可がおりない中、改革派は、「平和的なデモであれば政府はその安全を保証する義務がある」と、無許可でもデモを行なうと初めて宣言した。アラブ諸国の抗議活動が盛り上がりを見せる今を逃せば、もうチャンスはないという切迫したものが感じられたが、最後のデモから1年以上が過ぎた今、危険を承知でどれだけの市民が集まるのかと、僕は疑問に感じていた。

職場の同僚は、「内務省の許可がおりて続々と人が集まっている」と言った。だが、許可がおりたという公式なニュースはどこを探しても見当たらない。あるいはそうした噂が故意に流されたのかもしれない。
(つづく)

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