バグダッドに浮かぶ軍用無人飛行監視装置。米軍が開発し、同じ場所で滞空して24時間、レーダーとカメラで地区全体を監視している。(撮影:玉本英子)

 

玉本英子 現場日誌
4月7日 バグダッド
バグダッドの住宅地。午後1時半。
ドーンという鈍い音。窓ガラスがわずかに揺れる。
人びとが家々から飛び出してくる。皆、不安そうな表情で通りに向かう。
200メートルほど先にある高速道路で、走行中の米軍車両を狙った仕掛け爆弾が爆発したらしい。
すぐに米軍のヘリコプターがやってきた。重いプロペラ音を響かせながら、低空で現場付近を旋回する。
「いつものことだよ」
近くにいた青年は肩をすくめて言う。
フセイン政権が崩壊したのは8年前の4月9日。独裁が去ったあとに続いてイラクを覆った惨禍が過去のもになったとは言いがたい。
治安は以前と比べて大きく改善された。人びとと話していても、すこしばかりは希望が感じられるようになった。とはいえ、爆弾事件は自爆攻撃はまだ各地で毎日のように起きている。
8年間繰り返されてきた、あたりまえの「日常」。
苦しみが終わるのはいつのことか、とイラクの現場を取材し、人びとの姿を見つめ続けてきた。 だけど、こんな「日常」がいつ終わるのか、まだ誰にもわからない。
(バグダッド・玉本英子)

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