4月9日 バグダッド
4月9日はバグダッドがアメリカ軍に陥落してから8年目にあたる。
フセイン政権の時代はもう過去の記憶になりつつある。
だが、人びとの暮らしぶりは変わっていないのが現状だ。
「イラク解放」を記念して休日と定められたこの日を、市民が祝うような空気は感じられない。街角にはいまもコンクリートの防護壁が立ち並び、200メートルごとに軍や警察の検問所にでくわす。
9日午前、バグダッド市内ではサドル師支持のシーア派政党が呼びかけたデモがあった。
「占領反対、アメリカは出て行け」の横断幕が掲げられた。
デモがあったサドルシティの住民のほとんどはシーア派で、旧政権下では冷遇されていた。いまでも貧困層が多く、地区では誘拐や殺害事件も絶えない。地区をコントロールしているのはシーア派の民兵たちだ。
「フセイン政権時代に抑圧されてきた私たちにとって、今日はお祝いの日。だけどその後の宗派抗争で、人びとは互いに尊敬しあう心を失ってしまいました。アメリカ軍には一日も早く完全撤退してほしいが、まず電気、水、仕事、教育をなんとかしてほしい」と住民の中学校教師、ユスフ・ハシミさん(28)は語った。
昨年夏、米軍の戦闘部隊はイラクから撤収し、現在、活動は後方支援任務に限定されている。
町を歩く米兵の姿を見かけることはなくなったものの、今でも米軍の戦闘車両や軍用ヘリコプターは頻繁に目にする。
テレビではフセイン政権崩壊8周年のニュースの扱いは小さく、シリアでの反政府デモのニュースを流していた。それも停電ですぐに電気がこなくなる。
バグダッド市民にとっては、まだまだ先の見えな厳しい生活が続く。
【バグダッド・玉本英子】