日本アニメが大好きという大学生アリ・カディムさん(中央)と同じアニメファンの友人たち。「日本の同世代の友達をつくってアニメやマンガについて語りあいたい」と話す。(4月14日:撮影玉本英子)

 

玉本英子 現場日誌
4月14日 バグダッド - イラクのオタク?
南部カルバラの大学生3人から連絡を受け、急遽バグダッドで会うことになった。
彼らは日本アニメの大ファンだという。
「アリ ヨンダイメ」の名を語るカルバラ薬科大学4年生のアリ・カディムさん(22)は"NARUTO"の大ファン。
ストーリーについて熱く語ってくれたが、私にはさっぱり分からず「日本人なのに知らないなんて...」と残念そうな顔をした。

彼が日本のアニメに興味を持ったのはプレイステーション2がきっかけだった。
フセイン政権時代の2002年、彼が中学生の頃、プレイステーション2を買うために兄と3ヶ月間アイロン工場でアルバイトしたという。「人生であれほど必死に働いたことはない」と話す。

親に泣きつき残りのお金を出してもらい、やっとのことで手に入れたプレステ2は当時750ドル(当時8万円)。イラク戦争の時もプレステ2だけは片時も手放さなかったという。その後"NARUTO"のゲームで遊んだことがきっかけで、日本のアニメが大好きになった。

バグダッドで生まれ育ったアリさんだが、2006年春に、いとこが路上で誘拐され、その後遺体で発見されるという悲しい出来事があった。治安悪化を憂慮した両親はアリさんを南部バスラの学校へ転校させた。大学もバグダッドではなく、カルバラの大学へ行かざるをえなかったという。
家族と離れ、寂しい思いでいる彼を癒してくれたのも、現実と離れた夢の世界を見せてくれる日本のアニメやマンガだった。

アリさんは"デスノート"や"BLEACH"など日本のマンガについても詳しい。
イラクには日本のマンガ本などは売っていないため、すべての情報をネットで得ている。時には日本語のマンガを日本語→英語→アラビア語に訳して読むという。

イラクの大学生の多くは、レバノンなどのアラブ諸国やアメリカのポップミュージックが大好きだ。
「僕は歌手では浜崎あゆみが好きかな。大学ではみんなが僕のことを"日本のアニメが好きな変わった奴"って言うけれど、気にしない。マンガだって一度読んだらやみつきになる、って薦めてるよ」と話す。

彼の夢は日本語を本格的に勉強することだ。今、イラクには日本語学校はないため、ネットを使って独学で勉強している。
「ニホンゴ ムズカシイ デモ ガンバリマス マンガヨム シタイ!」とアリさんは笑顔で語った。
【バグダッド・玉本英子】

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