第2回 米軍戦闘部隊撤退後の治安
― 昨年の夏に米軍の戦闘部隊が撤退しました。バクダッドの治安状況はどうですか? -
(玉本)
バグダッド市内に2か月あまり滞在しましたが、街なかで米軍兵士の姿を見かけることはありませんでした。一方で、米軍の戦闘車両が一般道を通過するのは日常茶飯事で、軍用ヘリコプターも毎日低空飛行で飛んでいました。
バグダッド市民は戦闘部隊が撤退したということは知っています。一方で米軍が完全に撤退したわけではないという事実もバグダッド市民は認識していました。
バクダッドでは検問所が非常に増えました。いまはイラク軍やイラク警察がおよそ200メートル間隔で検問をしています。治安状況が悪いところでは100メートルおきぐらいに検問所がありました
検問所をそれだけ増やしても、爆弾事件など完璧には防げないんですね。「手を抜いてチェックしているなぁ」と思うようなところもありました。確かに自爆は減りました。厳しい検問があるということで、爆弾を車の中に積んで移動することが容易ではなくなったことは確かです。
バクダッドでは厳しい検問をすり抜けるために、サイレンサー銃(銃撃音がしない銃)を使った暗殺、無差別攻撃が増えています。銃を持っていても、普通の銃ということで検問所を突破できるということもあります。
2011年4月だけで、バグダッド市内ではおよそ200人が殺害されました。自爆による殺害が減ったからいって、治安が良くなったわけではなく、厳しい状況はいまも続いているのです。
― イラク軍と警察での治安の維持は難しいということでしょうか? ―
(玉本)
06~08年の宗派間抗争が非常に激しかった時は、無政府状態に近い時もありました。その時期と比べると治安状況は徐々に回復されていると思います。しかし、街を車で通っても、"ティーウォール"と呼ばれるコンクリートの高い防壁がずっと立ちはだかっていますし、検問所もいたるところにあります。
治安状況は、少しは改善されたといえますが、このまま平和になるのかというと、とてもじゃないですが、そういう状況ではないと思います。
― イラクの人びとは、イラク軍やイラク警察をどう見ていますか? ―
(玉本)
当初は、「イラク軍やイラク警察は、米軍から訓練を受けた、占領に加担する人たち」とイラクの一般の人たちはみていました。しかし、状況は少しずつ変わってきました。
米軍が撤退していく中で、イラク人だけでなんとかやっていかなければならない。やはり、イラク軍に頼るしかないわけです。イラク警察、治安部隊に頼るしかないんです。
まだまだ、イラク軍もイラク警察も十分に機能し得ているとはいえないので、国民には不安は当然あります。それでも彼らに頼るしかない。彼らになんとか国を守ってもらうしかない。そう考える人たちは確実に増えてきたことを実感しています。
(つづく)
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