(合田)
会場にお配りしたQ&Aカードで参加者から質問をいただいています。
事件が記事になるまでの板橋さんの気持ちには、無実の被告を救おうという気持ちがあったのでしょうか。
(板橋)
誤解を恐れずに言いますと、NOですね。
村木さんには、無罪判決前に各社よりいち早く、単独インタビューをさせてもらい、判決前の心情を聞かせてもらいました。その中で、村木さんの気持ちに共感できたとも感じました。
ただ、私が気に入った人だから救いたいとか、人柄がいいから助けたいというのが取材の原点になってしまうのは、私としてはちょっと違うなと思っています。
逆に言えば自分が気に入らない人だったら、救おうと思わないとなってしまいます。感情面というより、ファクトがみつかるか、どうかです。ファクトがあれば、きちんと裏付け取材して記事にする、それを出発点にしたいと、記者として私は考えています。
たとえ担当する検察組織であっても、検察に不正のファクトがあれば、それは表に出そうということです。
(合田)
具体的な質問があります。鈴木弁護士に接触していたのは板橋さんだけですか。
フロッピーディスクの鑑定をセキュリティー会社にだすとき、その正体を明らかにしましたか。そのとき、セキュリティー会社側の反応はいかがでした。
(板橋)
鈴木弁護士に接触していたのは私だけでした。もっといえば、なんらかの内部証言を得て、フロッピーディスクを裏付けに使おうとしていたのも朝日新聞だけでした。
セキュリティー会社には検察ということは伝えていません。鈴木弁護士も解析依頼をするときは立ち会ってもらったので、なんらかの裁判関係の解析であるとはセキュリティー会社側もわかっていたと思います。
データをきちんと解析してほしいとは伝えましたが、すべてを話したわけではありません。
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【2011年3月5日(土) エル・大阪2F 文化プラザにて】
★板橋洋佳(いたばし・ひろよし)朝日新聞大阪本社 社会グループ記者(2011年5月10日付で東京本社社会グループ記者)
1976年、栃木県足利市で生まれる。99年4月、栃木県の地方紙・下野新聞に入社。2007年2月に朝日新聞に移り、神戸総局を経て08年4月から大阪本社社会グループ。09年4月から大阪司法記者クラブで検察担当。11年5月より東京社会部に移る。共著に、下野新聞時代に取材した「狙われた自治体-ごみ行政の闇に消えた命」(岩波書店)。
大阪地検特捜部証拠改ざん事件報道を、朝日・板橋記者と語る 第1回