第8回 公開議論・質疑応答 (2)報道機関と権力の関係
パネリスト:石丸次郎(アジアプレス・インターナショナル)
板橋洋佳(朝日新聞記者)
司会:合田創(自由ジャーナリストクラブ)
(合田)
ジャーナリズムにとって今回の大スクープというか、板橋さんのお仕事はどういう意味を持っていたのか、という話に移っていこうと思います。
それに関わって、検察に不都合な記事を載せて、検察からの報復はありませんか。検察庁への登庁停止とか、会見、カメラ、質問の禁止という話を聞くこともあります。
記者クラブを含めて、唯々諾々としてそれを受け入れるのか。声を押しとどめる社内、社外の勢力はあるのでしょうか。
(板橋)
証拠改ざんの記事を書いたあと、検察庁への出入り禁止はありませんでした。朝日新聞だけ会見に出られないということもなかった。
出入り禁止になることについても、組織として、個人として、それぞれ考えがあると思いますが、個人的にはどちらでもいいと思っています。
逮捕の発表を場に参加できなくなるリスクはあるので、一般的には不利益にはなりますが、他のルートや検察関係者から情報をとれる関係があれば、こだわる必要はないのかなと考えています。
(石丸)
権力との関係ということに集中してお訊きしたいと思います。
大阪高検の三井さんが裏金事件を暴露しようとした直前に逮捕されました。三井さん自身は検察の中の人でした。外部の、たとえばジャーナリストを口封じ的に、報復として逮捕するようなことがあれば、大変な問題です。
検察との関係のなかで、どの程度までの危険を想定しながら取材していたんでしょうか。
(合田)
それは記者の逮捕もありうるということですが、その容疑はなんでしょうか。
(板橋)
考えていたのは守秘義務違反、つまり国家公務員法違反です。それ以外では、警戒しすぎだと思われるかもしれませんが、例えば書店に行った際に、鞄に本を入れられて万引きで逮捕されるとかですね。いろいろ想定はしましたが、尾行されたことも結果的にありませんでした。
つまり、杞憂におわったのが実情です。
検察組織にも、改ざんをした検事とは違って、証拠と法に基づいて真面目にやっている検事たちがいます。組織全部がだめというわけではありません。
当然、きちんと物事を判断できる検察幹部や現場の検事たちもいますから、おそらく逮捕はないだろうと思っていましたが、危機管理としては想定していました。
(会場から)
プラットホームから突き落とされたりとかは考えませんでしたか。
(板橋)
電車に乗らないようにはしていましたが、そんなところまでいくと、ミステリー小説になってきますね。
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