(石丸)
もう少し突っ込ませてもらいます。
村木さんが逮捕されました。これは重大な事実です。それを伝えるのは当然やらなければいけないことだと思います。
僕も含めて胸に手を当てて考えなければならないと思うのは、メディア、ジャーナリストが、リークというか権力機関からの情報提供に乗っかって、冤罪に加担する報道をして来た過ちを犯してきたという事実です。
なぜ警察がこういう容疑で逮捕したのか。もっともらしいことが裁判が始まる前から書かれているわけですよね。こんなことやったらしいとか周辺取材で人格の話まで出てくるわけです。
「昔からケチな人でした」とかおまけを書くわけですよ。世間がその人にたいしてマイナスイメージを持ってしまうことがわかっていてもです。村木さんのときだってそうです。ロス事件のときもひどかった。
つまりメディア、ジャーナリストが冤罪に加担してきたことにたいする自覚をしなければならないということです。
とりわけ警察に一番近いところで接している板橋さんが何か考えていることがあれば教えてください。
(板橋)
まさに石丸さんが仰ったとおりで、逮捕段階から証拠が甘いとか捜査ミスがあるという話がとれればそれはベストですね。それは取材力にも関わってきますが、なかなか難しいのが現実です。
わたし自身がどんなことに気をつけているのかといえば、警察が隠している捜査ミスがあれば、それがあとでわかったとしても、きちんと取材して記事にすることが担当記者として問われていると考えています。
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【2011年3月5日(土) エル・大阪2F 文化プラザにて】
★板橋洋佳(いたばし・ひろよし)朝日新聞大阪本社 社会グループ記者(2011年5月10日付で東京本社社会グループ記者)
1976年、栃木県足利市で生まれる。99年4月、栃木県の地方紙・下野新聞に入社。2007年2月に朝日新聞に移り、神戸総局を経て08年4月から大阪本社社会グループ。09年4月から大阪司法記者クラブで検察担当。11年5月より東京社会部に移る。共著に、下野新聞時代に取材した「狙われた自治体-ごみ行政の闇に消えた命」(岩波書店)。
大阪地検特捜部証拠改ざん事件報道を、朝日・板橋記者と語る 第1回