ビルマ政府は戦闘開始から10日後、6月18日付の国営紙「ニュー・ライト・オブ・ミャンマー」で初めてカチン州での武力行為に言及した。
「国軍がKIAに対する攻撃を始めた目的はただ一つ、国軍兵士と、国家にとって重要な水力発電事業を守るためだ。侵略や弾圧の意思はまったく持っていない」
とし、今回の攻撃がターペインダムの稼働・建設を守るためだと強調した。
中国はビルマ各地で自国用のエネルギー開発事業をおこなっているが、カチン州だけでも9つの水力ダム事業をビルマ政府と共同で進めている。
「国際危機グループ(ICG)」のデラジャコマ東南アジア部長は、民主化運動系の雑誌「イラワディ」の質問に対し、
「中国は今回の戦闘が起きたことに驚かなかったのではないか」
と答え、ビルマ国軍がターペインダム周辺からKIA勢力を排除することを事前に承認していた可能性があることを示唆した。
このように、ビルマ北東部の情勢には中国の利権が深く関わっている。またビルマ政府とKIAとの関係は2009年から悪化していたことも確かだ。ビルマ政府はKIAに国境警備隊への編入、すなわち事実上の武装解除を求めたのに対し、KIAはこれを拒否した。
このため両者の間で1994年来の停戦合意が破棄され、カチン州で内戦が再発するのは時間の問題だと見られていた。
「ダムを守るためというのは煙幕にすぎない。国軍の本当の目的はKIAの領域を支配下に置くことだ」とKIA系のニュース・サイト「カチン・ニュース」を運営するノーディン氏も述べる。
9日に始まった戦闘も、既にターペインダム周辺以外の地域に広がっている。
【寄稿:秋元由紀/ビルマ情報ネットワーク】

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