ミャンマー(ビルマ)の少数民族モン族の武装勢力である新モン州党(NMSP)最高幹部のナイ・トーモン議長は16日、タイ国境近くで単独インタビューに応じ、ミャンマー国軍がNMSPを直接攻撃した場合だけでなく、同盟関係にある他の民族武装組織への攻撃が長期化した場合には、戦闘を開始する用意があることを明らかにした。
NMSPは、1958年の創設以来、モン族の自治権を求めて武装闘争をおこなってきたモン族の最大組織。1995年に軍事政権と停戦協定を結び、政治的対話による民族の自治権の獲得をめざしたが、憲法案を話し合う国民会議では、自由に議題を提出することさえもできなかった。最終的に、軍事政権が押し進めて定めた現行憲法に対し不支持の立場をとり、2010年の総選挙にも参加しなかった。
新憲法にはミャンマー国内の軍事組織は国軍のみとする規定があり、軍事政権側はこれまでNMSPに対し国境警備隊への編入や武装解除を要求してきた。NMSPは一貫して拒否し、停戦協定は2010年9月1日以降無効となっている。
NMSPと同様に軍事政権と停戦協定を結んでいたが国境警備隊への編入を拒否したカチン独立軍(KIA)やシャン州北部軍(SSA-N)に対し、国軍は現在攻撃を続けている。
国軍は、今のところNMSPに対しては攻撃していないが、KIAやSSAに対する作戦が終了した後にNMSPに対する攻撃に踏み切るとみられている。
ナイ・トーモン議長は、配下の兵士に対し、NMSP支配地域に国軍が侵入した場合には、攻撃を許可する命令をすでに出していることを明らかにした。
一方で、昨年以来、他の民族組織との連携も強化している。ことし2月には、ミャンマー国軍による攻撃に対して一体となって抵抗していくため、NMSPなど軍事政権と停戦協定を結んでいた少数民族武装組織とカレン民族同盟(KNU)など元々停戦協定を結んでいなかった少数民族武装組織が結集し、民族連合連邦評議会(UNFC)を発足させた。各民族組織が一体となり、ひとつの指揮系統で動く「連邦軍」を創設することで合意した。
ナイ・トーモン議長は「UNFCでは、他の同盟組織が攻撃を受ければ、同盟全体が攻撃を受けたものとみなすことで合意している。同盟組織への攻撃が長期化すれば、われわれを国軍が攻撃していない段階でも、国軍を攻撃し、戦線の拡大を図ることもありうる」と語り、NMSPとして国軍に対して先制攻撃も辞さない方針であることを明らかにした。
【サンクラブリ(タイ西部)=赤津陽治】