長期内部調査 超インフレの発生、その要因を探る 3
整理 石丸次郎/リ・ジンス
解説 超インフレの要因は何か 石丸次郎
1.食糧価格は中国人民元レートの変動とほぼ軌を一にしている
〇九年一一月三〇日に「貨幣交換」を実施した直後、北朝鮮政府は諸物資の価格を〇二年七月に実施した「七・一経済管理改善措置」時点の水準にするよう指導すると発表、米価は市場で一キロ四四ウォンで販売するよう指導していたようである(地域によっては二五ウォンという証言もあり詳細は不明だ)。
それにともない二〇〇九年一二月初めに、市場の食糧価格はいったん、新貨幣で三〇~四〇ウォンになった。その後は、グラフ1および表1にある通り、コメ、トウモロコシのみならずあらゆる物価が乱高下しながら急上昇した。もっとも高かった今年二月には、コメは約二〇〇〇ウォン弱、トウモロコシは約九〇〇ウォン超に急騰した。わずか一年余りの間に米価基準で四〇倍を超える超インフレである。
「市場に行っても朝の値段と午後、夕方の値段が違う」。
「市場の商人たちも、下手に売ると損するので物を売ってくれない」。
「都市の市場ではドルや元での払いを要求されることが多い。一ドル札もたくさん流通している。細かい釣り銭は朝鮮ウォンで計算してくれる」。
北朝鮮内部からはこのような現象が報告されていた。一方で「貨幣交換」によって市場活動は大きな打撃を受けた。これについては、具体的な証言とともに次節で詳述する。
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