なぜ、このような超インフレが発生したのだろう。数値をグラフ化してみてわれわれも驚いたのだが、食糧価格の変動は対中国元交換レートの変動とほとんど一致していた(グラフ1、2)。つまり、コメ、トウモロコシ価格の上昇は、主として国内の需給に因ってもたらされたのではなく、中国元(つまり外貨)に対して朝鮮ウォンが下降したことに因ることが鮮やかに浮かび上がったのである。

2.米価は人民元基準で見ると大きく上がっていない
さらにグラフ3を見ると、コメとトウモロコシの価格を中国元換算で計算すると、一〇年はほとんど横ばいである。これは北朝鮮の北部地域の商売人たちにとっては二〇〇〇年頃からの「常識」として語られていた。
「北朝鮮の食糧価格がどんどん上がるというが、コメの値段は、ほぼ常に中国の市場の値段より少し高い価格で一定している」
というのだ。

昨年中国から北朝鮮に輸出されたコメの値段は一キロ当たり三元弱(表3)。ここに商売人たちの利益や運送費などの経費を上乗せると、グラフ3で見た価格程度になるというのは納得がいく。北朝鮮では食糧が不足しているから価格が上昇するという説明は、一時的にはあり得ても一年単位では見ると正しくないことが分かる。
(つづく)

〈リムジンガン〉混迷深める北朝鮮経済(1)-1
〈リムジンガン〉混迷深める北朝鮮経済(1)-2
〈リムジンガン〉混迷深める北朝鮮経済(1)-4
〈リムジンガン〉混迷深める北朝鮮経済(2)-1
〈リムジンガン〉混迷深める北朝鮮経済(3)-1

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