また、別の46歳の男性も同じように、チャトで働いたために家を追われたと金記者に語った。
二人の男性は今後の生活の展望を尋ねる金記者に対し、
「その日暮らしの放浪者として生きていきたくない。できる仕事があれば何でもしたい。仕事があれば紹介して欲しい。石炭の荷積みでも何でもするので、ぜひ仕事を作ってください」
と切実に語った。
二人の男性は、まさしく失業者である。全ての成人男性に対し、国が定める職場への出勤を強制する北朝鮮の労働システムは、対価としての食糧と給与を国家が支給できなくなっているため、実質的には破綻しているのが現状だ。このため、生計を立てようと前出の「チャト」のような所に仕事を求めるのだが、何らかの理由でそこからもドロップアウトしてしまった人々は、仕事をしたくてもできない状況に追い込まれてしまう。
豊富な品物が取引されるジャンマダン(市場)を中心とする市場経済の拡大によって、北朝鮮の住民は国家に頼らず生活できるようになった。一方、市場経済の中では過酷な生存競争に人々はさらされることになる。
金記者がカメラに収めた失業者の男性二人は、拡大する市場経済と北朝鮮国家の制度疲労の狭間で翻弄されていると言えそうだ。
【取材=金東哲(キム・ドンチョル)整理=李鎮洙(リ・ジンス)】
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