トウモロコシの価格も基本的には同様に考えて差し支えないだろうが、トウモロコシは自留地(農民が作物を自由に処分できる土地)や、傾斜地に不法耕作された畑などでも生産されるため、コメより市場に流入する比率がずっと多い。そのため、国内の需給のバランスが価格に反映されやすいと言える。
例えば、一〇年九月から一一月まで、米価は横ばいなのにトウモロコシの値段が下落したのは、収穫期で大量のトウモロコシが市場に放出されたからだと思われる(グラフ1)。
ほぼ一年半にわたる国内調査の結論として言えるのは、超インフレの主因は朝鮮ウォンの下落にあるということだ。経済が破綻状態のために、北朝鮮国家と通貨ウォンに対する信用が地に落ちて、どんどんウォンの価値が下がるのは当然のことである。朝中貿易では朝鮮ウォンはまったく決済通貨として用いられることはない。しかし、グラフを見るとウォンが上昇する局面が時々ある。なぜだろうか?
「貿易会社が中国から物品を輸入したい時は、市中の米ドルや中国元を集めようとするので『外貨高ウォン安』になる。逆に中国に大量に輸出して手持ちの外貨が増えた時は、市中で外貨需要が減って『外貨安ウォン高』になる」。
これは〇四年に脱北して現在は中国にいる編集部のファン・ミランの指摘だ。これは非常に納得のいくコメントなのだが、朝鮮ウォンの騰落は貿易だけで決まるわけではないだろう。ウォン紙幣の国内流通量も勘案する必要がある。
「普段給料が遅配欠配続きの工場などで、珍しく給料が支払われる時は決まってピカピカの新札が配られる。そんな時は『札をたくさん刷っているようだ』と皆で噂し合い、またドルが上がるだろうと予想する」
と内部記者のキム・ドンチョルは言う。
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