[報告=金東哲(キム・ドンチョル)] 私、朝鮮内部情報誌「リムジンガン」の記者、金東哲は今年1月から4月にかけて、朝鮮西北部の平安北道を中心に取材を行い、約10時間におよぶビデオ撮影を行った。その一部は、アジアプレスを通じ世界に公開され反響を呼んだと聞いた。
一方、その過程で、朝鮮の食糧事情について、日本や韓国、そして世界で十分な理解が得られているとは言えない、という話も耳にした。そこで私は今回の取材内容を元に、朝鮮の食糧難、とりわけ軍の食糧難について整理したく思う。
◇「春には部隊100人のうち、50%が栄養失調に」
◇食事内容は「みすぼらしすぎて話せない」
3月、平安北道のとある地域を訪れた私は、士官学校生を表す襟章を付けた兵士2人に声をかけた。徴兵制を敷く朝鮮では、兵士が部隊に所属しながら士官学校に通う制度がある。卒業生はまず下士官になる。26歳と29歳だという二人の兵士は、所属する部隊の食糧事情について尋ねる記者に対し、訥々と語り始めた。なお、この撮影は取材であることを明かさない隠し撮りで行われた。
金:食事はとっているのか?
兵士1:はい、食べてきました。
金:(軍では)どんな食事が出るんだ?
兵士1:トウモロコシご飯です。
金:量はどれくらい?
兵士1:それは...見栄えは、「盛り」はいいですよ。
金:それでも体が弱って見えるな。大変だろう?
兵士1:つらいです。
金:栄養失調にかかっている兵士は多いのか?
兵士1:皆弱っています。
金:皆が?
兵士1:私の所属する分隊では皆そうです。
金:それでも一日三食は食べさせてくれるのか?
兵士1:はい...人民軍を飢えさせたら大変なことが起こりますから(笑)
上官に口止めされているのか、正確な食糧事情をなかなか明かしてくれない。口調もどこか投げやりだ。見ると手に小さな鍬(くわ)を持っている。
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