道端でクヮべギ(揚げパン)や餅を売る女性。(2010年6月平安南道 キム・ドンチョル撮影)


証言 
経済悪化、民衆の困窮 2

整理 石丸次郎/リ・ジンス

1. 市場の機能不全(承前)
物が売れなくなって現金収入を減らしているというのは、取材において誰もが語ることだった。北朝鮮の庶民がどんな商売で、いかほどの収入を得ているのか、いくつか具体的に見てみよう。
「清津(チョンジン)で衣類を売る商売をしていました。『貨幣交換』以前は、毎日コメ一・五キロ分を稼いだが、『貨幣交換』後には利益で買えるコメの量は半キロ分になってしまった」。
(一〇年六月 清津 六〇代女性)

キム・ドンチョル記者が平安南道平城(ピョンソン)市の市場で撮影した映像には、次のようなやり取りが記録されていた。露天の食堂を営む女性がキム記者に食事をしていくよう勧める。キム記者は食事をしながらこの女性に尋ねる。

キム:一日いくらの稼ぎになりますか?
女性:一〇〇〇ウォン稼げれば万々歳です。

キム:それでも稼ぎになるから(商売を)やってるんですよね?
女性:命がこの商売にかかっているから、稼ぎが少なくても出て来ないわけにはいかないでしょう。配給なんて無いんだし。

キム:家族は何人ですか?
女性:四人です。

キム:いやあ、それでは足りないでしょう。どうやって生きているんですか?
女性:他に方法がありますか? お粥をすすってでもやっていかなきゃ。
(一〇年一〇月、一〇〇ウォンは約六・五円)
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