証言 経済悪化、民衆の困窮 4
整理 石丸次郎/リ・ジンス
3. 深刻な電力事情
北朝鮮の電力事情が悪いという話は、今に始まったことではない。平壌を訪問した在日朝鮮人や外国人が、頻繁な停電に悩まされ冬のホテルで寒さに震えたという体験談は枚挙にいとまがない。
しかし、昨年九~一〇月に金正恩氏の公式デビュー関連行事が平壌であったが、この前後に訪朝した人たちからは、「平壌の夜が明るくなった」「停電がなかった」と、電力事情が良くなったという情報がもたらされた。また在日朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」は、二〇一〇年一月一二日の電子版で「電力事情が大きく改善されている」という趣旨の記事を掲載している。
金正恩氏が初めて公に姿を現した労働党代表者会が開かれた昨年九月末から、軍事パレードが行われた一〇月一〇日の党創建記念日までの平壌市中心部は、一〇年度中でもっとも電気事情が良かった「特別期間」だったと思われる。正恩氏デビューという〝慶事〟に停電は許されない。
また、正恩氏に世界の耳目を集めさせようと、多くの外国メディアを呼んだ〝晴れ舞台〟である。この「特別期間」に、しかも平壌中心部に短期間滞在しただけでは、電力事情の深刻さは分からないということだろう。
実際には、優先的に電気供給を受けている平壌ですら、普段は停電が常態化しており、地区によってはまったく電気が来ない日も多いと、北朝鮮内部のパートナーたちは伝えてきている。電力事情の悪化は住民生活や産業に大きな影響を与えている。最近の国内の電気事情に関する証言をピックアップしてみよう。
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