鴨緑江を挟み向かい合っている両江道恵山市と中国吉林省長白県。手前の中国側から撮影。2010年7月 撮影:李鎮洙(リ・ジンス)(C)アジアプレス


◇密輸の片棒を担ぎ始めた「暴風軍団」

とどまるところを知らない中国との密輸や麻薬の流通、脱北行為を取り締まるため、朝中国境の都市・両江道恵山(ヘサン)市に「暴風軍団」が派遣されてきたのは、8月初めのことだった。

その後約一か月の間、
「市内では強力な捜査権を持つ『暴風軍団』を恐れ、国境沿線の人々、特に麻薬を取り扱う人々は息を殺して暮らしている」
と、同市に住む取材協力者の崔敬玉(チェ・ギョンオク)氏は語る。

崔氏によると、「暴風軍団」は、賄賂を受け取ることで法律の規定よりもはるかに軽い処罰を下した公務員を訴追する任務も帯びている。例えば過去、麻薬を流通させた罪で逮捕された男性に対し、法律で定められた刑期よりもはるかに軽い処罰で済ませた保安員(警察官)と検事がいるかどうか、「暴風軍団」は事件記録を綿密に再検証しているという。

また「暴風軍団」は拘束した人物を担当の保安員がどう扱うか、最後まで見届けると公言しているとのことだ。このため、これまで賄賂を受け取って「犯罪行為」を陰に陽にほう助してきた保安員(警察官)たちは戦々恐々としているという。
密輸の現場にも変化が起きている。

「『特殊機動隊(春頃から国境に派遣されている特殊部隊)』が密輸商人と癒着し、安全に密輸を行う手立てを整えることが常態化してしまい、『暴風軍団』はこうした行為に関連する全ての人間を現場で拘束している。もちろん密輸品は没収だ」
と崔氏は語る。
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