結婚式の記念ビデオ撮影も2004年頃から流行した。業者がデジタルビデオで撮影しVCDにコピーして「納品」する。新郎新婦の後ろのテレビの上に乗っているのがVCD再生機だと思われる。扇風機や炊飯器もある。裕福な家庭なのだろう。(2007年にリ・ジュンが入手した映像から)


VCDの爆発的な普及

〇二年頃、中国からVCD(注1)再生機が大量に流入し始めた。従来のVHSのビデオデッキに比べ、VCD再生機は格段に安くて一般家庭でもなんとか購入でき、画質も良かったからである。VHSのビデオデッキはほとんどが日本から入って来たもので、平壌市にある外貨だけが使える商店で売られていた。

値段は一万日本円あるいは一〇〇米ドル以上したと思う。ところがVCD再生機は、機種によって価格差はあるものの、新品が三万一〇〇〇~四万ウォンくらいだった[編集部注:〇四年八月を例にとると、一〇〇ドルは、実勢レートで約一一万ウォン程、新品一台が三〇ドル以下で買えた]。また、中国からさらに安い中古のVCD再生機もどんどん流入していた。

当時、朝鮮にVCDを普及させるために、韓国の「安企部」(現国家情報院)が工作資金を投入しているという話を度々耳にした。しかし私が考えるに、外の情報に飢えていた朝鮮住民の間で、映像に対する需要が高まったことがVCD普及の原因だったと思う。〇四年までの間に、朝鮮のほとんどの都市郡に住む住民たちがVCD再生機を持つようになったと私は見ている。この頃、新品VCD再生機の入った箱を持ち歩く人々を通りでよく見かけたものである。

中国のVCD再生機製造会社は、朝鮮の事情をよく把握していたようで、朝鮮の実情に合った機械をたくさん生産した。朝鮮は電気事情が悪いため頻繁に停電する。それで、充電バッテリーの付いた再生機も生産されていたし、使用説明書も朝鮮語で書かれていた。

朝鮮で爆発的に流行したVCDであるが、当初見られていたのは、国家が承認した外国の映画や漫画(アニメ)などであった。安価なVCDの登場によって、人々は他人の家にお邪魔して窮屈な思いで見るのではなく、自分の家で気兼ねなく録画物を見られるようになった。しかし、人々はすぐに、映像の種類が少ないことに退屈するようになった。
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