◇止まらぬ脱北と情報漏れに強硬措置 咸鏡北道一帯で
北朝鮮東北地域の中国との国境地帯に「特殊部隊」が配備され、警備が強化されていると、3日、咸鏡北道茂山(ムサン)郡に住むアジアプレスの取材協力者が電話で伝えてきた。茂山郡は豆満江を挟んで中国と接する人口10万を超える国境都市だ。
この取材協力者は
「『特殊部隊』は平安南道から派遣されており、先月29日に茂山郡に到着した。これにより、(1)特殊部隊、(2)国境警備隊、(3)教導隊(編注:17歳から50歳までの除隊軍人と健康な男性で構成される予備軍。戦時中には戦闘に動員される)という三重の構えで国境が警備されることになった。警備強化の理由は『脱北を完全に撲滅するため』だと噂されている」
と語った。
また、この「特殊部隊」については、
「正確にどんな部隊なのか今の段階では分からない。ただ彼らの評判が随分悪いことは確かだ。彼らは市場をわが物顔で歩き回り、買い物の代金もちゃんと払わないため、耐えかねた商人たちから不満の声が上がっている」
と伝えた。
茂山郡などの豆満江上流地域は川幅が狭く、中国への「脱北・渡江ルート」となっている。このため、近隣の住民はもちろん、脱北しようと他地域から来る者が多く、これまでも国境警備は厳重だった。
しかしながら、脱北や中国への一時的な渡江を図る人々は通常、安全のため国境警備隊に賄賂を払ってを買収する場合が多く、渡江行為の根絶は難しい。北朝鮮当局はこうした警備隊の腐敗と住民との癒着に悩まされ続けてきた。
今回の措置には、他地域の部隊を駐屯させることで、国境警備隊への牽制と監視を強めるとともに、地元住民との慣れ合いや癒着を防ぐ狙いがあるものと思われる。同じ取材協力者は7月に「許可無く豆満江を渡ろうとする者は無条件射殺せよ」という指示が、住民組織である人民班を通じて布告されたとも語っている。
またこの指示を出したのは、金正日総書記の三男で後継候補の金正恩氏だと、茂山郡の住民たちの間では話されているという。
一方、国境地帯で起きている同様の動きを韓国の北朝鮮専門インターネットメディアである「デイリーNK」は4日、この「特殊部隊」は金正日総書記一家を護衛する「護衛総局」の部隊であると伝えている。
中国延吉=パク・ヨンミン