韓国文化が若者に流行
実に多くの朝鮮の人々が、すっかり韓国ドラマにハマってしまったわけだが、当然、それは朝鮮社会に影響を及ぼすことになった。まずドラマの登場人物の服装や化粧、言葉遣いなどを真似する人たちが現れるようになった。

また、ちょっと勘の鋭い人たちはドラマを見て、発展した資本主義社会の姿を観察して、金儲けになりそうなネタを積極的に真似したり取り入れようとしたりもした。例えば美容師たちは、韓国式のヘアスタイルや毛染めの色あいを取り入れた。ジャンマダンで衣類を扱う商売人たちは、韓国で流行している服を仕入れようと躍起になった。中国に出国する人たちや密輸屋に頼んで、ドラマに出てくる俳優が身に着けていた服や靴を手に入れようと努力した。

さらに、若い女性の間では、韓国風のファッションはもちろん、韓国式のイントネーションで話すことまで流行るようになった。そんな彼女らを、非社会主義的であると取り締まる組織(糾察隊)も一方で生まれた。糾察隊は、道のど真ん中で韓国風の服を着た人を呼び止めてズボンを切り裂いたり、事務所に連れて行って「批判書」を何十枚も書かせたりした。

こんな笑い話もある。韓国ドラマを見たということである人が保安員の取り調べを受けたのだが、その保安員はあまりにたくさんの韓国ドラマを見たせいか、イントネーションが韓国式であったため、尋問中の会話がすべて韓国式になってしまい、お互い朝鮮式に戻すまで長い時間がかかったという。本当か嘘かは知らないが。

このように、〇二年からの二年ほどの間、罰を受けたり、追放されたり、法的制裁を受けたりしながらも、人々は、皆一生懸命格闘しながらVCDで金を稼ぎ、そっと文化的生活を楽しんでいたのである。国家によるVCD取締りが厳しくなればなるほど、商売人たちはそれに屈することなく、むしろ新しい方法を研究、考案しながら、常に取締り機関より先を走った。取り締まる方が常に後手に回っていた。

今ではVCDだけでなく、USBメモリーやハードディスクなど、より安全で、持ち運ぶのにも便利な記録媒体や機器を使って、厳しい統制をすり抜けながら、朝鮮の人々は韓国のドラマや小説を見ている。朝鮮当局がどんなに資本主義の「黄色い風」(北朝鮮で資本主義的文化を指す言葉)を防ごうとしても、またどんなに厳しい法的制裁を科そうとも、これからも様々な手段が生み出されて、韓国の文化は伝播していくと思う。新しい外部情報を求める朝鮮の若い世代の好奇心は旺盛だし、韓国ドラマを運ぶジャンマダンの力は成長しているのだ。
整理 ファン・ミラン
二〇一一年三月

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