編集部がインタビューした延社郡の農民女性。「貨幣交換」への不満をぶちまけ「早く政治が変わってほしい」と訴えた。(2010年7月 中国延辺朝鮮族自治州)
編集部がインタビューした延社郡の農民女性。「貨幣交換」への不満をぶちまけ「早く政治が変わってほしい」と訴えた。(2010年7月 中国延辺朝鮮族自治州)

 

分析 食糧難をどう考えるべきか 3
石丸次郎
3. 凄まじい農民からの搾取と収奪
農村の困窮がひどいという報せが多い。四月になって農村で食べ物が尽きたという報告もあちこちから届いている。
まず、北朝鮮の集団農業の現状を簡単に説明しておこう。協同農場では、一定の土地を五〇~一〇〇世帯が一つの作業班となって耕作する。稲、トウモロコシ、ジャガイモ、豆、麦などが多く、農場ごとに計画(ノルマ)を立てて栽培し、収穫後に国家に一定の割合を納付、残りが農民に現物と現金で「分配」される仕組みだ。

計画に責任を持つのは各作業班の下にある分組で、達成されない場合は「分配」が減らされる。本来は、種子や肥料、農薬、ビニールなど営農資材は農場として(つまり国の責任で)準備することになっていたが、現在ほとんどの農場で、農民自身がその多くの部分を負担しなければならなくなっている。

現金収入の少ない農民は、秋の収穫後に利子をつけて返済する約束で、春の植え付けの時期に農場の幹部に借金をする。まるで封建時代の農園主と小作人の関係のような支配構造が存在するのだ。

「分配」に関しては地域差があるようだ。内部からの情報では穀倉地帯の平安南道や、黄海南・北道では「分配」は皆無だという報告が多い。むしろ山がちな咸鏡北道や両江道の農場の方が、足りないまでも「分配」は出ているようである。このあたりの理由はよくわからない。農場への取材は今後の課題である。

問題は、農民の収入になるはずの「分配」や自留地からの収穫から、軍糧米や「首都米」(平壌市民への配給や首都整備費用だという)が徴収されていくことだ。集団農業本来の規定以上の量を収めさせられるのは、国家による収奪以外の何ものでもない。

農村に関する内部から報告を紹介しよう。まずは、平安南・北道の農場を取材したキム・ドンチョル記者のコメントだ。
「農場の生産が悪い理由は、まず農場員が働かないこと。熱心に働いている人が珍しいぐらいだ。私の周囲の農場はどこも〇九年も一〇年も「分配」がなかった。農民も期待もしていない。いくら仕事をしても一切手元に残らないのに誰がやりますか? 皆(農場の畑は)適当にやって自分の畑(自留地)に勝負をかけるんだ。
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