一〇年一〇月、キム・ドンチョル記者はその年の収穫や分配の様子を聞こうと、平城市内の市場で食事をしている農民と思われる若い男性二人に、声をかけた。
キム:(酒をつぎながら)どこから来たのですか?
男性1:×× から来ました。
キム:×× は農村ですね。今年の収穫はどうでした?
男性1:凶作でした。
男性2:ダメでした。
キム:何がダメ?
男性1:今年は......、トウモロコシがダメでした。五〇キロの袋いっぱいに入れても、五〇キロにならないんですよ。中に空洞があって軽いんです。
男性2:コメを脱穀しようにも電気がないので、手でやらなければならないんです。三〇トンを超える量を二日でやっつけました。
キム:「分配」はどうでしたか?
男性1:「分配」なんて。
キム:まったく無いんですか?
男性1:まったくありませんよ。
キム:それならどうやって暮らしていくんですか?
男性1:自給自足で......。
男性2:労働者と同じですよ。彼らも配給をもらってないんでしょ。
男性1:そう。農民には「分配」が無い、労働者には配給が無い。
以下は、一〇年夏にリムジンガン編集部の中国在住メンバーのパク・ヨンミンが、公務で中国を訪れた、労働党の地方の中堅幹部にインタビューしたものである。彼は各地を回って「講演」と呼ばれる政治宣伝を仕事としている。多くの農村を日常的に回って見た収奪される農民の悲哀を語ってくれた。
幹部:私は「思想事業」のために農村をよく訪れます。一度に数十の農場を巡回しますが、まったくもって現実は悲惨です。農民たちは口をそろえて「塗炭(とたん)の苦しみ」だと言っています。「本当にもうこれ以上、どうしようもない」という声が多い。とにかく徴発されて取られるものが多くて三三種類もある。農民たちは「三二のものを持っていたら、三三もっていかれる」という言い方をします。
次のページへ ...