二〇一一年三月時点の複数の内部情報を総合すると、運賃は表1の通りだ(キム・ドンチョル記者の他、チェ・ギョンオク氏らの調査による)。
参考までに、鉄道の運賃は恵山--平壌の場合、表2の通りである(調査者と時期は同上)。ヤミ価格というのは、定価に賄賂を上乗せしたもの。切符販売窓口の駅係員は、賄賂を受け取って上司に上納しなければその地位が安泰でなくなるため、ヤミ価格での販売が常態化しているという。
2. 運営方法
「サービバス」一台には通常、運転手、車掌、護衛の三人が乗り込むという。運転手は軍人もいるが、ベテランの一般人のドライバーが多い。軍出身の運転手は荒い運転をすることが多く、事故を防ぐためにも一般人が重宝されるのだという。
平壌から清津のように一〇時間以上もかかる長距離運行の際も基本的に一人で運転を担当するが、二〇一〇年の三月のキム・ドンチョル記者の報告によると、最近では運転手の「助手」も同乗するという。
車掌は運賃を集め、乗り降りする乗客を管理するのが仕事だ。未婚の女性、それも肝っ玉の据わった、気の強い女性が好まれるという。男性の場合、途中の休憩で酒を飲んだりすると役に立たなくなるばかりか、乗客とケンカを始める場合も多いため、女性が担当するようになったとリ・サンボン氏は語る。
そしてバスには必ず護衛役が同乗する。金正日総書記が一九九八年以降、すべてにおいて軍が優先されるという「先軍政治」を掲げてからは、軍人たちがタダ乗りをしようと暴力をふるい、バスのガラス窓に石を投げつけるなどの狼藉が絶えなかった。
これを防ぐのが護衛の役目だ。屈強な除隊軍人に任せることが多く、乱暴な軍人に対する抑止力となっているという。また、軍傘下の会社とはいえ、運転手、車掌、護衛のいずれも軍服を着用することはなく、もちろん銃も所持しない。全体の秩序は運転手が保つという。
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