Yoi Tateiwa(ジャーナリスト)
【連載開始にあたって 編集部】
新聞、テレビなどマスメディアの凋落と衰退が伝えられる米国。経営不振で多くの新聞が廃刊となりジャーナリストが解雇の憂き目にさらされるなど、米メディアはドラスティックな構造変化の只中にある。 いったい、これから米国ジャーナリズムはどこに向かうのか。米国に一年滞在して取材した Yoi Tateiwa氏の報告を連載する。
第1節 ウィッキーリークスと調査報道 (2)
国務省に協力を求めたニューヨークタイムズ
「もたらされた公電の多くは我々、ワシントンの基準から見て極秘と言えるものは多くはなかった。しかし国務省はそれらが出る事には否定的な見解を示していた」
司会のボブ・シーファーにうながされ、ニューヨークタイムズのスコット・シェーンが話し始めた。
ニューヨークタイムズはアメリカのメディアとして唯一、WL(ウィッキーリークス)から事前に公電を提供されていた。ニューヨークタイムズはどのような作業を経て、WLからの公電をニュースとして出したのか。
2010年の12月14日、保守系の有力シンクタンクCSIS(Center for Strategic and International Studies)に集まった外交官や識者、ジャーナリストを前に、スコット・シェーンは慎重に言葉を選びながら語り始めた。
「受け取った公電をどう出すのか、我々はおおよそのスケジュールをイギリスのガーディアン、スペインのアルパイス、フランスのル・モンド、ドイツのダシュピーゲルらと話した。
そして出稿スケジュールを作った。公電の中から報道に値すると考えた100ほどを選び、国務省に持って行き、『我々はこれらを出そうと思う』と伝えた。そして、我々にどの部分が報道されると危険なのかについてアドバイスをしてくれないかと頼んだ。
国務省の最初の立場は、『これは盗まれた公文書であり、君らがこれを持っているべきではないし、それらを報じるべきではない』というものだったが、最終的には協力してくれた」
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