重要なのは「首領絶対制」における地位
二段重ね国家の北朝鮮にとって重要なのは「唯一の首領」という地位である。「首領」とは「絶対リーダー」と解せる。北朝鮮では金日成以外にリーダーはおらず、唯一人、金日成のみが国家と社会を指導するという「唯一指導体系」が、七〇年代に確立した。政治ライバルの出現を事前に防ぐための装置である。
「唯一指導体系」は法律を超えて優先される「掟」のようなもので、社会全体が、常に金日成首領を絶対化しなければならないと規定している。北朝鮮の体制が「首領絶対制」と定義される所以である。
金日成が死んでも、金正日は首領にならなかった。今でも北朝鮮のあちこちに「金日成首領様は永遠にわれわれと共におられる」というスローガンが掲げられているとおり、金日成は北朝鮮で永遠に唯一の首領とされているのである。
それでは金正日はというと、「唯一の指導者」という呼称である。これはいわば「首領の代理人」だ。彼以外に、金日成に代わって国と社会を指導することはできない仕組みになっている。「絶対リーダー」の地位を代理人として継承したのだ。
ここで重要なのは、ポスト金正日体制がこの「首領絶対制」をどうするつもりなのかが見えないことである。金正恩への権力世襲の道に入って行った現在、二段重ね国家の上部構造である「首領絶対制」において、金正恩にどのような「絶対リーダー」の地位を獲得させるつもりなのだろうか? 現時点で金正恩は、労働党軍事委員会副委員長と大将という地位を得ているが、そんな公式ポストよりも、この「絶対リーダー」の地位の方が格段に重要である。
金正日は「首領の代理人」になった。それでは金正恩は「首領の代理人の代理人」か? これではいかにも弱い。今後の権力世襲過程で「首領絶対制」における地位がどうなるのかが注目される。
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